▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
台湾に、オーストロネシア語ファミリーの分布圏内では、オーストロネシア語が数千年にわたって話されていて、言語的に分岐するのに充分な時間があった場所は台湾であり、そこがオーストロネシア語がもともと話されていた場所であることを示唆している。
だとすれば、マダガスカル島からイースター島までをカバーする範囲に分布しているオーストロネシア語ファミリーの言語は、すべて台湾から広がりはじめた人間集団の拡散がもたらしたものであろう。
この人間集団の拡散がニューギニア沿岸に到達する頃までには、人びとはダブル・アウトリガー・カヌーで島々の間を行き来できるようになっていたと思われる。
石器時代に、世界で最も人口密度が高かったのが、ニューギニア高地だった。
アジア人のパイオニア集団が太平洋の探検を終えたのは、西暦1400年頃に彼らがニュージーランド沖のチャタム諸島に入植したときである。
いまだ謎に包まれたパプアニューギニア。
ニューギニアは、肥沃三日月地帯や中国と同様、植物の栽培化を独自に始めた場所。
メラネシア、ミクロネシア、ポリネシア、アジアの海流沿いにはタロイモ、ヤムイモ、マングローブが自生している。
面積はテキサスよりわずかに大きいだけなのに、世界に6000ある言語のうち、なんと1000がニューギニアに集中し、数十を超える言語グループに分かれて存在している。
そして、それぞれの言語は、英語と中国語の違いに匹敵するほど異なっている。
500人にも満たない言語人口が半数で、最大のグループでも10万人
そこそこ。
4万年前に初期のニューギニア人が東インドネシアの島づたいに移り住んで以降、オーストロネシア人が紀元前1600年頃に拡散してくるまで、東インドネシアの経由でニューギニアに伝わったと認められるものは何もない。
アジア大陸から移動してきたオーストロネシア人は航海術を持ち、家畜を飼育する文化を持ち込んだ。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
ほんの数千年前まで、現在のブラックアフリカに広く分布していたのは、黒人とはまったく異なる人種の人々だった可能性がある。それに、アフリカ大陸の黒人といっても多種多様である。
アフリカ大陸では世界の主要な人種の6つの人種のうち5つの人種が暮らしていた。そのうち三つはアフリカ大陸固有の人種である。世界の言語のうち四分の1はアフリカ大陸にしか分布していない。多様性という面で、アフリカ大陸の匹敵する大陸はない。
マダガスカル島ではアジア人、黒人、混血を問わず、全ての人種がオーストロネシア語を話している。そして、彼らのオーストロネシア語は、マダガスカル島から4000マイル(約6400km)離れているボルネオ島で話されているマーニャン語に近い。
例えて言えば、アメリカ先住民が暮らす北米大陸の目と鼻の先のキューバの住民が金髪碧眼で、かつスウェーデン語に近い言語を話しているのを発見したようなものである。
その数1500におよぶアフリカの言語の複雑極まりない関係を5つの言語ファミリーに分類。
世界の三大宗教であるキリスト教、ユダヤ教、イスラム教は、アラム語(キリストと彼の使徒が話していた言葉)、ヘブライ語、アラビア語という、いずれもセ ム語グループに属し、系統的に近い関係にある3つの言語をそれぞれ話す人種社会で誕生しているので、われわれはセム族の人々を本能的に近東と結びつけてし まう。
しかしながら、言語学者ジョセフ・グリーンバーグの分類によれば、セム語族は、アフロ=アジア語ファミリーを構成する6つを超える語族のひとつにすぎない。
しかも、セム語族以外の語族(つまり222の現存言語)の分布が見られるのはアフリカ大陸だけである。
セム語族に属する諸語の分布範囲も、主としてアフリカに限定されている(19ある現存言語のうち12がエチオピアだけに分布している)。
これらの事実は、アフロ=アジア語がアフリカ大陸を起源てしていること、および、アフロ=アジア語ファミリーの一つの語族だけがアフリカ大陸から近東へ拡散したことを示唆している。
つまり、西洋文明の精神的な支えである新・旧約聖書やコーランを著した人びとの言語は、アフリカ大陸で誕生した可能性がある。
コイサン諸語には、「吸打(クリック)音」と呼ばれる子音がある。(舌打ちする時の音に似ている)
そして、アフリカ南部に分布している諸語も、そこから北に1000マイル(約1600km)以上も離れたタンザニアに例外的に分布しているハツァ語やサンダウェ語もこのクリック音を持っている。
クリック音は、アフリカ南部で話されているコーサ語にもあり、アフリカ南部で話されている何種類かのニジェール=コンゴ語にもある。さらに意外なことに、 タンザニアのハツァ族やサンダウェ族よりもコイサン諸語分布圏から離れているケニアで取り残されたように暮らしている黒人たちの話している、二種類のアフ ロ=アジア語にもクリック音やコイサン諸語の単語が見られる。
わずかに残された言語的痕跡だけが彼らがかつて広範に分布していたことを示唆している。
こうしたことは、居住民の身体的特徴を研究しただけでは推測出来る事ではなく、彼らの言語的特徴を検討してはじめて分かることである。
アフリカ全体および亜赤道の大部分に分布しているニジェール=コンゴ語は、系統的にサブグループの一つである、バンツー語に属する。
ニジェール=コンゴ語ファミリーに含まれる諸言語の、じつに半数にあたる1032の言語が、このバンツー語に属するのである。
そして、ニジェール=コンゴ語の言語人口の半分以上(約2億人)が、このバンツー語を話している。
バンツー語サブグループは西アフリカの東部に位置するカメルーンとナイジェリアあたりに生まれ、そこから赤道アフリカ一帯に拡散した。
「銃・病原菌・鉄」
ジャレド・ダイアモンド
から抜粋