NO.104 Soft meets Pan インタビュー

Dec 05, 2013

大石始氏によるインタビューです。お時間のある時に是非!
SOFT meets PAN
JUZU a.k.a MOOCHY Produce
Tam – Message to The Sun
Music by SOFT meets PAN


JUZU a.k.a MOOCHYが提示するもう1つの未来像


Text by Hajime Oishi


京都を拠点にマイペースな活動を続ける
スペース・ジャム・バンド、SOFTの演奏に、
カリブ海最南端の小国
トリニダード・トバゴのプレイヤーたちが
スティールパンの音色を乗せた
異色コラボレーション・アルバム
『SOFT meets PAN』。


打ち捨てられたドラム缶を原材料にしながらも、
その奇跡のような音色が世界中の人々の心を捉えている
スティールパンは「20世紀最後のアコース ティック楽器」
とも呼ばれるが、本作ではアール・ブルックスや
ケン“プロフェッサー”といった現地の
名プレイヤー/アレンジャーが参加。
SOFTの壮大か つスピリチュアルなサウンドに
宇宙的な響きを加えている。

また、本作は『タム お日さまへの伝言』
と題された絵本とのセットで
リリースされる点でもユニークだ。
こちらのイラストを手掛けているのは、
これまでドライ&ヘヴィーらの
ジャケットを手掛けてきた内田松里。
音のみならず、
ヴィジュアル/ストーリーがジョイントすることによって、
色鮮やかな世界が広がっている。
本作のプロデューサーにして、
『タム お日さまへの伝言』の
ストーリー制作/音源の
一部ミックス/アレンジまで手掛けたのは、
先頃自身の新作
『JUZU presents Re:momentos “Movements”』
を発表したばかりのJUZU a.k.a MOOCHYだ。
ここからは彼のロング・インタビューをお届けしよう。

 

まず、どういうところから
この作品のアイデアが出てきたのですか?

SOFTとは、僕がDJと並行して
EvilPowersMeというバンドをやってた
20歳くらいの時から付き合いがあって。
東京ではバンドとDJが分離し ていて、
両方やってる人がそこまでいなかった。
だからこそSOFTとはウマが合ったし、
僕が音楽を通して他の地方の人間とがっつり仲良くなったのも
彼らが 最初だった。SOFTとは15年も密な付き合いがあったし、
僕も準メンバー的な感覚で「このバンドをもっと面白くできる」
っていう感覚を持ってて。そういった中でアイデアが出てきた。
それと、自分のアルバムを内田直之くんのところでミックスしてた時、
彼の奥さんである内田松里と仲良くなって。
彼女は絵本マニアなんだけど、彼女がイメージしてるものと
僕がイメージしていたっていうアイデアが段々合致して、
スティールパンの柔らかい響きと
彼女の持ってる世界観が合うだろうな、
と思うようになった。

いつ頃からパンに興味を持っていたんですか?

十代の頃からあらゆるジャンルを
聴けるだけ聴こうと思ってたから、
その時期あたりからじゃないかな。
自分のなかでパンという存在が植え付けられたのは、
やっぱりヤン富田さんがきっかけ。
20thセンチュリー・スティール・バンドとかはDJでもかけてたし、
土生くん(剛/リトル・テンポ)との出会いも大き いかな。
スティールパンの音色には牧歌的だけど未来的な感じがある。
新しい未来を感じさせるというか、
あんまりノスタルジックにならない。
それと、産業廃 棄物であるドラム缶から
あんなに美しい音色を奏でる楽器を作り上げるっていう、
いわば錬金術的発想にも惹かれた。
無から美を生むっていう発想。
これからの未来にかけてもそういう発想は重要だと思う。

競演経験のある土生さんではなく、
わざわざトリニダード・トバゴまで行って
レコーディングしてくるっていうのもMOOCHYさんらしいですね。


土生くんとだったら凄くやりやすかったと思うけど、
SOFTは京都に根付いたバンドだし、
そういう彼らの演奏がまったく生まれの違う
音楽家の演奏と交わる ことで、
単純に聴いたことのない響きになるんじゃないかと思って。
その意味では、「何かと何かを混ぜることで
違うものを生み出す」っていう
DJ的発想が あったのかもしれない。
エレクトロニクスを前提にした未来像じゃなくて、
人種が混ざり合っていくことで生まれる未来像を
そこから作れるんじゃないかとも 思った。


制作はどうやって進めたのですか?


まず2009年の1月に京都でSOFTの演奏をレコーディングして、
それを 3月に(トリニダード・トバゴへ)持っていった。
京都の段階ではパンをどう入れるか、
そんなに具体的なイメージがあったわけじゃなくて、
パンの演奏者がイ ンプロヴィゼーションをできる余白を残しながら、
アレンジを組み立てていった感じ。
今回アレンジ面で意識したのはデヴィッド・アクセルロッド。
それとマイ ルス・デイヴィスとギル・エヴァンスのセッションから
インスパイアされた部分もある。
SOFTのインプロヴィゼーションだけを延々続けていくんじゃなく て、
1回演奏を止めて「ここをもう1回やってみよう」とか
「このブレイクを16小節繰り返してから、
こういう展開に持っていってみよう」なんて
アレンジを 組み立てていって。
ギル・エヴァンスの『Out of the Cool』は意識してたかな。

それはNXS(MOOCHYが率いたバンド)とも違う?

違う。あの時は自分も演奏者だったから。
演奏者の輪の中に入ってしまうと客観視できない部分もあって。
今回はデヴィッド・アクセルロッドやギル・エヴァンスみたいな
アレンジャーの立場で関わったけど、それが面白かった。

京都でSOFTの演奏をレコーディングしている段階から、
ケン“プロフェッサー”フィルモアやアール・ブルックスに
参加してもらおうと考えていたのですか?


いや、まったく。トリニダードに行くのも初めてだったし。
ただ、キューバやベトナム、ハワイに行って
音楽を創造してきた経験から、
(求めれば絶対に返って くる)っていう確信があった。
今回もそれを信じて疑わなかったし、それによって
今回も素晴らしいプレイヤーと作品を作ることができた。
こういうことがある から調子に乗っちゃうんだけどね(笑)。
トリニダードに行ってから幾つかパンヤード
(スティールパンの練習場)を覗いてみたけど、
サウンド・スペシャリス トというバンドの
ヤードに惚れ込んじゃって。
で、僕が行った2009年のサウンド・スペシャリストの
アレンジャーがケン“プロフェッサー”フィルモアだっ た。
彼の溢れ出るヴァイスにも惹かれたし、
理屈ではなく音楽を捉えていた。
ちなみに
トリニダードに住んでいるエンジニアの

ワタナベヨウイチさんに
僕のイメージを伝えて、
現地のアレンジャーとして彼が動いてくれた感じだったけど、
僕のイメージを直感的に解釈してくれた。サウンド・スペシャリストのヤードに惚れ込んだ理由は?うーん、それは言葉では説明しにくいかな。
十代のころから毎年高円寺の阿波踊りに遊びに行ってたけど、
やっぱり好きな連(打楽器隊や踊り子で
構成される集団の1つ)があるわけで。
ブラジルのカーニバルに行ってもトリニダードのパンヤードに行っても、
どこかで好きな連を探すような感覚で歩き回ってる。

MOOCHYさんの場合、海外に行っても
自分との違いを見出してそこにエキゾチシズムを感じていくのではなく、
自分との共通性を見出していきますよね。

そうだね。実際に今回のアール・ブルックスとのセッションでも、
最初は結構な金額を提示されて。
でも、どこかのデカいレコード会社が
バックアップに付いてるわけじゃないから、
「勘違いすんな。日本っていう国は
第2次世界大戦で焼け野原にされて、
そこからウチらのジイちゃんバアちゃんの世代が
頑張って経済復 興しただけで、
最初から金持ちだったわけじゃない。
あんたたちもアフリカから奴隷として連れてこられて
大変だったかもしれないけど、
俺らだってそう変わら ないんだぞ」って話したら、
僕に対するイメージが変わったみたいで。
僕が「日本っていう国では年間3万人が自殺してるんだ」って
言おうとした瞬間にアー ル・ブルックスがチューニングを始めて、
「上を向いて歩こう」を叩き出した。
そこからいきなり彼との距離が縮まった気がする。
産業廃棄物からスティールパ ンが生まれたのと同じように、
日本もチリやゴミのなかから這い上がってきたわけで、
立場は違えども共有するものがあると思う。

アール・ブルックスにはアレンジ面で
具体的な注文をしたのですか?


「リゾートの音楽じゃなくて、
セロニアス・モンクの音楽から感じられるような
内なる宇宙を描きたい」と伝えた。
彼なりにその言葉を解釈してくれたみたい で、
演奏が終わった後に
「こんな演奏をしたのは初めてだ」って言ってましたね。
「SOFTのメンバーは何人だ?」って訊いてくるから
「7人です」って答え たけど、そうしたら
「じゃ、俺を入れて8人だな」って(笑)。
今回のアルバムに「ichigoichie(一期一会)」っていう曲があるけど、
それは僕の テーマでもあるから。

そして、トリニダードで録音してきた
スティールパン音源を持って帰国した、と。
帰国してからは、以前はライズ・フロム・ザ・デッドをやってた
Shohei “Yang Bo” Kawamoto(元SOFT)にホーン・セクションの
アレンジを頼んで、そこから半年くらい作業を続けた。
あと、トリニダードの人口の40パーセントが インド系なんだけど、
今回はムンガルさんていうインド系の人にシタールも弾いてもらってる。
ムンガルさんは凄く面白くて、
エレクトリック・マイルスのよう な人種混合バンドもやってる人。
「君の音楽にはインド的な旋律があるね」とも言ってた。
だから『SOFT meets PAN』と言ってるけど、
もっと広い意味でのコラボレーションがここに含まれてる。
今回はミックスもいろんな人にお願いしてて、
1曲目がJEBSKIっていうNXSの元メンバーで、
2曲目がクニユキ(タカハシ)さん、
3曲目が内田(直之)くん、4曲目が僕で、
5曲目が(SOFTの)KNDくん。
それぞれが 独自のスキルと世界観を持ってるから、
曲のカラーに合わせてミキサーを変えた感じかな。


今回のコラボレーションには絵本のイラストを手掛けた
内田松里さんも含まれてますね。


僕には子供がいるから絵本も結構読んでて。
絵本の中にも重いテーマを扱ったり考えさせられるものもあって、
子供に読んで聞かせているとこっちが涙ぐんじゃ うようなものもある(笑)。
SOFTのレコーディングをしている時点から、
そういうものを作れないかと思うようになってた。
SOFTのメンバーにしても子 供がいるし、
「子供に何かを伝えたい」っていう思いは
今回の原動力になってるかな。
子供と何か共有できるものがあれば嬉しいし。


ストーリーはMOOCHYさんが作られてますね。

旧約聖書の時代からある
「人間がすべての生命体の長」っていう考え方とは
異なる世界観、アジア的な森羅万象の考え方は
常に意識してるけど、
今回はそういう 部分を広く伝えたくて、
英語の翻訳もつけた。
英訳はイギリス人の方にサポートしてもらったけど、
欧米には「仲間」っていう言葉がないことに今回気づいて。
「他の生命体とも仲間である」っていう観念は
欧米にはあまりないものだから、
アジアから発信する必要もあるんじゃないかと思ってる。

今後の活動に関してはいかがですか?

僕は抽象的なストーリーを描く中で
表現したいものもあるから、
映画を作りたいとも思ってる。
例え話をする中で具体的な問題を考える、
そういうことは常に意識してるので。
それと、2011年の春くらいにアール・ブルックスを
日本に呼びたいと思っていて、
今ちょうど動いてるところですね。

Tam Message to The Sun
タム~お日さまへの伝言~

2010.12.22.発売
2625 yen (税込)

音楽:SOFT meets PAN ☆
作:宮脇崇成(みやわきたけしげ)
絵:内田松里(うちだまつり)
Produced by JUZU a.k.a MOOCHY

20 世紀最大の発明とも言われる楽器、
スティールパン(中南米の島トリニダート現地録音)の調べと
17年以上続く活動で、
京都における若者文化の象徴(アイコ ン)になったバンド=SOFTとの
まさしく夢のコラボレーション! ドライ&へヴィー、
キセルなどのジャケットで有機的な世界を放出する
内田松里 (はらまさこ改め)の絵と現代社会に対する
重要なメッセージが合体!
森羅万象を世界に伝えられるか?



 

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