NO.155 〜アルバム”COUNTERPOINT REMIX”とその背景を巡って〜 第1話

Nov 06, 2017

J.A.K.A.M. & 森田潤 80時間2万時超えインタビュー

〜アルバム”COUNTERPOINT REMIX”とその背景を巡って〜
第1話

*この「インタビュー」もしくは「対話」、或いは「雑談」は2016年11月、さらに2017年10月にJ.A.K.A.M.と森田潤の間で行われたチャットが元になっている。80時間はタイム・スタンプの記録による。徹夜での会話が多い。本来は3万字を優に超える原稿量があるが、読み物として成立する様に森田が編集をした。話の勢いはそのまま伝わる様に気を払った。また、若い読者を想定して、話題に関連するリンクを幾つか貼っておいた。何らかの参考にして頂ければ幸いです。

 

森田 : 今回のリミックス盤を作る事になった経緯を教えてください。

J.A.K.A.M. : 実はアルバム”COUNTERPOINT”制作時、EP1の”SHADOW DANCE”をMIXして仕上がる前にCHIDA君にはステム・データは渡していたので、ある意味同時進行でこれは進めていました。2014年の時点ですね。でも、それ以外の人には今年になって、それぞれの曲のステムデータを渡しています。アルバム自体をリリースした翌年は既に他の曲、つまりアルバムとはまた違う制作をやっていたりで、少しブランクがありました。でも、その間にMOMENTOSというパーティーなど今回のリミキサーとして参加してくれた面子と出会えたり、改めて交流する機会が出来たり、フィジカルな育みがあったのだと思います。


森田 : 作品だけじゃ無くて、実際に良く会うメンバーが揃った感じ?

J.A.K.A.M. : うーん。ケースバイケースですね。長年の仲間もいれば、近年近くなったり、今回の作品である意味始めて密になった人達もいますね。でも改めて観ると、MackaChinは15歳からの付き合いで、それ以外はSaidrumは音仲間としては付き合いはありましたが。京都のDaichiも長い付き合いですが、それ以外は近年の交流かもしれないです。

 

森田 : ある意味では日本のクラブのアンダーグランド・シーンのコンピでもあるよね?

 

J.A.K.A.M. : 日本の全ては網羅出来てはいませんが、それでもなんだかんだ2−30年そう言われているシーンには生息している様なので、そういう部分もあるかもしれないです。

 

森田 : リミックス盤を聴いて、実際にパーティーに遊びに行ってる時の様な印象を持ったんだけど。ハウス・テンポの曲が多いよね。結果的にそうなったのかな?

 

J.A.K.A.M. : ちなみにそれぞれのプロフィールはこちらに載せています。(http://www.nxs.jp/label_content/koko-0045.html) まあ自分のプレイと関係ある面子なんで、そこの現場感を共有している人は多いと思います。でも自分も含めて、雑多なところから今のスタイルを確立した感じで、そこまでハウスは意識はしていないつもりです。

 

森田 : リミックス頼む時はネタの説明とかするの? ワールド系の情報ってクラブ・シーンにそれ程は浸透してないじゃない?

 

J.A.K.A.M. : そうですね。人によってはその内容に興味を持って聞いてくる人はいました。でもほとんどの人は1サンプルとして、ある意味先入観無く、そのサウンドに取り組んだと思います。でも、”IXTLAN”って曲をやったDoShockBoozeにはカルロス・カスタネダの『イクストランへの旅』をまず読んでくれ、とか提案しました笑

 

*カルロス・カスタネダ(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/カルロス・カスタネダ)

 

森田 : みんなのループの扱い方なのか、ビートの入れ方なのか判らないけど、ワールド寄りのオリジナルをもっと現場仕様に仕立て直した感じだよね。

 

J.A.K.A.M. : そうですね。今回みんなに提案したのは、まずは本人がDJなりライブで使える、かけれるものにしてくれ。それをもし僕がかけれたら最高だし、とにかく一緒にやっていく上でこれらの曲が架け橋になってくれたら、というような事は伝えました。なので、それぞれが得意とするビート感に嵌めてくれたのは意図したところです。民族音楽に寄せるというよりは、寄って行った感じですね。個人的には、自分が興味あったり出会って知った民族楽器の素晴らしさ、その根底にある文化にも興味を持ってくれたらと思ってますし、リスナーにもクリエイターにも共有を出来たら良いなと思っています。

 

森田 : ステム・データって何chぐらいのデータ? ソロのトラックとかを全部渡して、自由にアレンジしてって感じ?

 

J.A.K.A.M. : そうですね。曲にもよりますが、30〜40のトラックになりますね。キックとかシンセとかパーカッションとかそれぞれソロで。ちなみにマッシュ・アップもアリだと伝えて。2曲目の”HOMELAND”は厳密には”ILE AIYE”という曲の声を使っています。それぞれのアイディアも興味深かったです。僕はあまり使っていませんが、今回のリミキサーのほとんどが使用しているAbleton Liveなんかは自由にテンポは変更出来るし、キーに関してもある程度自由に可変出来るので、良い意味で現実と言うか、本当の音という事よりかは「想像する世界」みたいなものをリミキサーには求めました。僕自体は良くも悪くもその演奏者達と直接に触れ合い、その民族音楽の形式みたいなものに尊敬もあり過ぎて、想像力で壊す事はしきれなかったので、それをやってもらった感はあります。

 

森田 :リミキサーは公募してた?

 

J.A.K.A.M. : 一応2週間くらいしました。海外からもアクセスはありましたね。何組か。でも最後まで付き合ってくれたのは国内勢でした。ぶっちゃけ、全曲にダメ出しというか、提案はしました。して無くていきなり良くて、注文をつけたら良く無くなって、やはり最初のテイクが良かったみたいのもあります。意図的ではなかったけど、ほとんどが年下で、先輩の意見を聞いてくれたというか笑 優しいです、みんな笑

 

森田 : アーティストに丸投げじゃなくて、ちゃんとディレクションしてるんだね。

 

J.A.K.A.M. : そうですね。昔、2002年かな。NXSという自分のバンドのリミックス・アルバムを出したのですが、その時に参加してくれたKUNIYUKIさんのリミックスにも何回か提案と言うか、、そういうディレクションをやり、結果、海外でいろいろとリリースされたりしたのもあり、経験的にそういう事は悪い事ではないのかなと思っています。1リスナーとして1DJとして、良いものに仕上げてもらいたいという願いは伝えたいと言うか。でも、それぞれのファースト・インプレッションは尊重して、ディテール等に対する意見ですね。

 

森田 : いまの若い人は皆んな4つ打ちが好きじゃない?ワールド系の1万倍ぐらい市場がある。作品やDJをやる上で、その辺のバランス感って何か意見ある?

 

J.A.K.A.M. : 僕がDJを始めた時は、オールジャンルというか雑多なところだったのですが、やっていくうちにJungleのシーンと何故かリンクして、そこにも巻き込まれつつ、でもどこか一つのジャンルにハマりきれず、いろいろやっていました。で、21歳のときタイやバリに行き、自分の中のトライバルなもの、要は民族的なものに対する関心は深まりました。それを自分の現場に落とし込み始めました。具体的にはJungleに尺八やケチャをのっけたり、そんな時期は周りでもそういう楽器をやりだす人間が多く、そういう面子とセッション的な状況になると、4つ打ちというか100-130くらいのBPMがハマり易いんです。

 

あとブレイク・ビーツ的なリズム・パターンはどうしても、黒人と言うかアフリカと言うかそういうグルーヴが肝になり、そうでない音楽、例えばガムランなどの楽器はハマリずらく、もっと根本的なリズム、グルーヴを自分の中では模索した結果、こういうスタイルになったので、そのジャンルをチョイスしたというよりは、消去法でこうなった部分もあります。

 

それは世間の感覚的なものも、そうやって精査され、残っていったものが、そういうものだったのかな、と思います。僕はアジア人だし、モンゴロイド系だと思うし、そこらへん民族的にもインディヘーナの人達のグルーヴ感やトルコなど中東の人たちにもグルーヴとしての共通項は模索していました。なので、DJをやる時も曲を作る時も根本的なグルーヴを模索しています。

 

森田 : ブレイク・ビーツとか4つ打ちだと扱えないネタも沢山あるじゃない?

 

J.A.K.A.M. : その扱えないネタというのは拍子的なことですか?基本的には、どういうヴィジョンに落とし込むかだと思うので、作り手次第なのかなと思いますが、、。

 

森田 : 拍子もだし、構造的に。例えば、ウム・クルスームの1時間の曲に無理やりに一定の4つ打ちを被せるとか笑

 

*ウム・クルスーム(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ウム・クルスーム)

 

J.A.K.A.M. :まさにウム・クルスームをいきなりアルジェリアの映像作家から、2010年に”AL ATTLAL”という曲、しかもライブ版をリミックスして欲しいと依頼されたのが大きなきっかけにもなりましたね。当初はいったいこれをどうしろと?と思いましたが、ともかくこの曲に合いそうなラフ・トラックの上にそのオーディオ・データを適当に貼付けていったら、なんだか合ってるかもしれない?という様な箇所が見つかり、そこからまたイメージが湧いて、その曲を名古屋のトリエンナーレでライブもやりました。なんだか不思議な雰囲気で、ちょっと感動的でもありました。

 

その手法は”LOVE FROM FAR EAST”などでもやっていたりします。編集作業中にチュニジアの昔の音源をかけながらやっていたら、なんか、これハマるかも、とハメてみたり。。
テーマと意図が合致すれば、グルーヴっていうのは自由と言うか、無限に解釈出来るのかなと、個人的には思っています。

 

Jungleの影響からか、倍速やその半分、3倍7倍等、無限に細分化も出来れば、増やす事も出切ると思います。でも、あくまでその民族音楽にフィットさせるというよりは、現代のビートにフィットさせるという事にはなると思いますね。

 

森田 : なかなかその辺の事を考える人が居ないから、尋ねたかったんだよね。

J.A.K.A.M. : サンプリング・アートという文化に興味や共感があるので、そこらへんオリジネイター、演奏者に失礼が無ければ、作法を重視するよりは、いかに現代の現場にそのソウルを発揮してもらうか、というのが僕にとっては重要なのかもしれません。

 

森田 : ゲスト・ミュージシャンの演奏もサンプリングを前提に頼んでるの?

 

J.A.K.A.M. : そこらへんはやってみないと分からないですね。そのまま使えたら編集の手間も無いし、楽ですが。そういう録音に慣れてない人がほとんどなので、NYのラテン系の演奏者みたいにはいかなく、だいたいは編集しないといけない状態が多いので、結果的にサンプリング的に使われる曲になる事もあります。でも、基本はそのまま使えたら使いたいです。作業的にもw

パーカッションなんかはループをするとつまらないので、相当切り刻みつつ、そのままの演奏を採用したくて頑張って編集しています。でも、今回のリミキサーは容赦無く、使えるとこだけ使っていて、楽そうだなとおもいましたねw

 

森田 : 笑 サンプリング・アートの1番美味しいところを更にサンプルして再構築したのが、今回のリミックス作品な訳だ。

 

J.A.K.A.M. : サンプリングアートとして、またそれを主体にトラックとして現場にフィットさせたプロデューサーは個人的にJ Dillaを思います。まあ、僕がナイル川のほとりでヌビアの人達と満月の夜、録音したものがただのサンプリングとは思えれませんが、、そこらへんは交差してますね。リアルなものでもあると思います。

 

 

森田 : サンプリングって、急遽は脳の仕組みまでも話が行きますね。

 

J.A.K.A.M. : 情報の集積で、文化は成り立っていて、演奏者の手法や楽器の構造も、それの集積の結果で、なにがオリジナルでなにがリアルか、ってことですよね?

 

森田 : 見て、聴いて、脳が情報を無意識にサンプルしてるんですよ。優先順位の高い、必要のある情報が「リアル」として認識になる。何が必要かは人間の文化や環境に左右される。つまり、何で東京で4つ打ちが受け入れられてるんだろう?てのが個人的に非常に不思議で。まあ、好きですけどね。

 

J.A.K.A.M. : まあ、最近のアフリカのハウスムーブメントしかり、それに便乗するアメリカのHipHop.R&B勢含め、ハウス、4つ打ちは勢力を強めていますよね。東京に限らず。レゲエもか。

 

森田 : 前に会った時、サブ・ベースの重要性を言ってたよね。重低音。

 

J.A.K.A.M. : そうですね。可聴範囲としてはキックが4つ打ちに聞こえますが、僕の中では爆音で出した時になって初めてわかる低音の波動っていうのは、確実に現代でしか味わえない快楽なので、そこは意識してますね。個人的な解釈ですが、可聴範囲でのリズム、グルーヴでいったら、キューバの音楽が人類最強なのでは、と思ってますね。キューバの文化自体が、インディヘーナ、アフリカン、そしてラテン系ヨーロピアン(次男、三男)が混ざって作られたチャングイを筆頭に未来グルーヴですよね。

 

森田 : キューバン・ラテンやアフロってシンセの重低音が必要無い構造じゃない?

 

J.A.K.A.M. : いや、西アフリカの楽器で地中に埋めて叩く楽器とか含め、アフリカ系はやはり太鼓から超ベース系ですよw 太鼓系は和太鼓も含め、低音系ですが、要はサウンドシステム、電気化された音の波動、しかも無限に増幅出来る世界がやはり60年代以降から始まりますよね。僕が若い時にやっていたRhythm Freaksというパーティーでサウンドシステムで参加してくれていたDesert StormのGaxiの口癖は『脳みそ揺らす』でしたね。。w

 

森田 : アンプが流通して音楽が変わりました。 サブ・ベースの快楽もそれからですよね。それまでは何かサワリが鳴ってるな、とか。

 

J.A.K.A.M. : ナチスの低音殺人兵器説もありますよね。Loftのデビッド・マンギューソーと福岡の居酒屋でサブベースについて討論した事がありますがw 彼と討論した結果、勝手に理解出来たのは低音とは、料理で言ったら脂身だと思いました。若いうちはたまらないものだけど、歳を取ると、あまりいらなくなる、という笑

 

森田 : 低音を鮮やかに操るのは難しい。音量のバランスとか帯域で音楽が変わっちゃう。

 

J.A.K.A.M. : 状況による、というか設定する対応人数によるのかな、と思いますね。一人と1万人とか。僕の想定はマックス4〜500人かなと思ってます。それ以上になると民族楽器というか、アコースティック・サウンドは厳しくなる気がします。いろんな意味で。

 

森田 : パーティーとして理想的な人数?

 

J.A.K.A.M. : それも結果論としてありますね。それ以上だとコミュニケートしづらいというか。派手にしないといけなくなりますよね。

 

森田 : ちなみに何Hzを強調して出したいとかありますか? 30Hzとか1万人規模で出るのかな?PA屋さん次第でしょうけど。

 

J.A.K.A.M. : そういう数字的な目的は無いですし、低い音が出ればいいとは思わなく、、でも先述したGaxiに20年前、何処を気にしたらいいか、質問したら200Hzがkickとbassのぶつかるところであり、1番美味しいところだ、と言っていたので、今も気にはしてますね



ちなみに演奏者達から指摘された事も沢山あり、6/8のリズムパターンを意識せずによく作っていたり、やはり3拍子的なノリは好きみたいで、今のTrapとかもすごくシンパシーあります。あとC#を基音にしてたり、音の傾向は他者から判定されたりして興味深いですね。

 

森田 : 6/8はキックを軽めにして、その分の隙間にサブ・ベースを入れやすい感じはします。

 

J.A.K.A.M. : ですよね。昔JUZU名義で作った”JOPOLO”というトラックはまさにそれでした。

 

森田 : TRAPの作品も聴いてみたいです。低域とアコースティックのバランスはマスタリングにも拘りがあるの?

 

J.A.K.A.M. : マスタリングは未だ不可思議な作業ですよね。正解が曖昧というか。再生装置によるところが多い気がしますね。判断しづらいですが、やはり名作と言われる作品におけるマスタリングの意味というか効果は絶大ですよね。

 

森田 : 例えばパソコンの小さいモニターで聴くのと、ラジオと、クラブで全然違うじゃない?

 

J.A.K.A.M. : 最近よりサウンドシステム・ベースの曲を作る様になって、そういう体験をしてるエンジニアはヴィジョンが違うのかな、とも思います。またGaxiの話になりますが、彼は最も音響的に素晴らしいのはTuff Gong盤のBob Marleyだと言ってました。実際、世界中のバーのヘボいスピーカーでもちゃんと鳴っているし、凄いと思います。ジャマイカはある意味バリと並ぶ音楽の聖地かもw 世界的な影響を考えたら、やはり最強かもしれないですね。Tuff Gongは最近アナログプレスも復活したらしいですよね。http://tuffgong.com/services/

 

森田 : ジャマイカンのダンスホールDJはみんなmp3の違法ダウンロードって聴いたけど、実際どうなんだろう。

 

J.A.K.A.M. :2005年にジャマイカにレコーディングしに行きましたが、みんなPCでしたね。

そのタイミングが濃くて、Joe ClaussellからマンハッタンにあったLoveという箱でDJを誘われ、そこは弁護士をそそのかしw ある意味豪勢な箱で、アルテックのスピーカーを壁に埋め込んであったり、ナカナカ良い音で、ついでにLoftの35周年もあったので、先述した福岡討論後でもありw スピーカーを組むのからデビッドのアパートの部屋までマーク・レビンソンのアンプを階段登って運ぶまでやり、その後のジャマイカでした。で、結果的にはジャマイカが最高でした。

何故か、、というところでまたGaxi説ですがw 野外のサウンド・システム・パーティーの電源は電柱から直で引っ張ってくるので、ハイエンド・オーディオ・マニアも羨むピュアな電気でやれてるから、ということらしいです笑 流石です。

 

森田 : 夢の「マイ電柱」だったのかw

 

J.A.K.A.M. : マジで音のヌケが良かったですね。いろんな意味でリガライズ強引にしてるのでw

 

森田 : やっぱり使い方が上手いんだろうなぁ。今日ホレス・アンディのワッキーズ盤を聞き直してて、これはハイファイ・オーディオ的には滅茶苦茶な音なんだけど、ちゃんとかっこよく音楽になってると言うか。

 

J.A.K.A.M. : おー。1960年代のブラックミュージックのmixバランスも、ある意味既に独創的なミックスバランスだなーと思います。リアルとか、どうでも良いというかw アフリカの芸術はピカソの解釈しかり、歪な立体感がありますよね。文学も含め。

続く、、

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