ZEN RYDAZ『ZEN TRAX2』
KYOKO OIKAWA Interview
ZEN TRAX2 参加曲

「CLOUD9」
Voice : MIKRIS Violin : KYOKO OIKAWA


「KOKORO」
Voice : AZ3,EVO
Violin : KYOKO OIKAWA


「SLOW BURNING」
Voice : D.D.S
Violin : KYOKO OIKAWA


「MIRRORS」
Voice : ACHARU Violin : KYOKO OIKAWA




▷名前
及川景子(Kyoko Oikawa)

▷肩書き
アラブヴァイオリン奏者(Arab-oriental-style violinista)

▷自身を一言で表すとしたら
珍獣


Q:ZEN RYDAZアルバム『ZEN TRAX2』へ参加したきっかけを教えていただけますでしょうか。
A:J.A.K.A.M.さんとのご縁です。


Q:送られてきたトラックを聴いたときの感想、そこにどのようなリリックをのせようと思いましたか?
A:ZEN RYDAZ『ZEN TRAX』ヴァイナル化にあたってのinterviewの時にたまたま私も居合わせて、その時に結構話しちゃった気がしますが、私の場合曲によってかなり差があります。
今回のアルバムの中では、例えば「CLOUD9」は、頂いた時点で既に世界観が出来上がっていたので、聴きながら雲の中を浮遊しているうちにむくむく湧いてきた断片的なフレーズを、結構かっちり構築してスタジオに入りました。
真逆なのが「KOKORO」で、「CLOUD9」を録った後にリズムトラック程度の段階のものを聞かされて、「これに何かキラーチューン的なフレーズ欲しいんだよね」というリクエストがあって、あとはザール? トランス? みたいなざっくりした一言二言を頂いて。「キラーチューン的てどんな……?(笑)」と思いながらぶっつけの一発録りで即興したものです。どこかイケそうな部分をカットして使っていただくのかな、というイメージでいましたが、結構まるっと使っていただいていて、逆に完成したトラックを聴いてアラブの中立音程も含む微妙な音使いのフレーズと見事に融合した歌に心打たれました。
日本語の歌とのこういう形でのアラブの音程の融合って、オリジナル曲として初なんじゃないかなと思うのですが、私にとって、こういうところがZEN RYDAZに参加している醍醐味です。アラブ音楽とか、カテゴリーや理屈抜きで、美しいと思う形を追求して行った結果としての新境地。奇をてらうとか、理論で組み立てるのではないところで、音楽としてとても自然な形でこれまでになかったものが生み出されているのを感じてます。



Q:レコーディングを行った際の感想を教えてください。心に残るエピソードがありましたら教えていただけますでしょうか?
A:上に同じ


Q:実際に曲が出来上がったときに聴いていかがでしたか?
A:やはり上の回答でほぼ出尽くしている気がしますが、「KOKORO」、「CLOUD9」にとどまらず、使われ方が美しくて毎回仕上がってきた音に癒されています。特に今回、入院中のベッドの上でアルバムの完成トラックを聴いていたので、本当に癒されていたと思います。


Q. アルバムのジャケットデザインに使用されているブルーロータスに注目されていましたが、どのようなことを思いましたか?
A:ジャケデザインにブルーロータス(青蓮華)があってびっくりしました。
中高校生ぐらいの時期に新聞で見た青蓮華という言葉が気になって、調べていく中で東洋の深い叡智や文化、音楽に開眼し、そこから手探りで長い彷徨いの果てにアラブの音に辿り着いた頃にはすっかりきっかけや経緯を忘れてしまっていたのですが、二十数年後にエジプトで青い睡蓮を見たときに、自分の音の探求が始まったことの発端が「青蓮華」だったということをはたと思い出した……という自分にとって非常にシンボリックな花がブルーロータスで。そしたら最近、Moochyさんが『Blue Lotus』という内藤忠行氏の写真集にとてもインスパイアされたことをどこかで書かれていて、その発行元がこれもたまたま知人の会社だったりもして、改めてこの話どこかでしたいと思いながらずっとしそびれていたんです。
蓮華=ロータスってそもそも不思議な花で、東洋のいたるところで、宗教や文化を問わず、この花が聖なるものの象徴として太古の昔から使われている。私が最初に「青蓮華」という言葉を調べた時には、仏教の中で様々な色の蓮華が聖なる意味を持つ象徴として出てくる、その一つとして説明されていたのですが、「青蓮華」の実在に関しては二つ説があって、白い蓮華が夜の光の中で青く見えたものという説と、当時は蓮華と睡蓮を区別しておらず、実際は青い睡蓮を「青蓮華」としたという説。
青い睡蓮は熱帯の花で、東南アジア、インドからアフリカまで広く分布してます。エジプトでもファラオの時代から数千年来咲き誇っていましたが、アスワンハイダムという近代の象徴的大事業による環境激変でナイル川から姿を消しました。この辺もよく考えると意味深なのですが。私がエジプトで見たのは、エジプト国立博物館の前に作られた人工池に、古代エジプトの植物としてパピルスと一緒に植えられていたものです。
ブルーロータスのシンボリックな意味はいろいろありますが、仏教では大悲救済のために煩悩と戦って真の自己を確立する叡智を示すとされたり、仏陀の瞳に喩えられたり、古代エジプトの青い睡蓮の方は、陽が沈むと閉じて、太陽が昇るとともに再び咲くことから「死と再生、創造」の象徴であると。蓮の花自体も、千年以上前の種が発芽開花するなど(大賀蓮)、復活や再生の力そのもののような花ですよね。今回のリリースというタイミングでMoochyさんがこの花にインスパイアされたということが、今の世の中が希求しているものとシンクロしてるなと。この花がアルバムのジャケに咲いてくれたのを見て、いいパワーを伝播するアンテナが立った姿のように感じました。
自分にとってもこのタイミングでのブルーロータスにシンクロすることが多く、何故か撮影の日も瞳柄のシャツを着ていたり、現在視力がかなり落ちてたり、ICUからの退院直後だったりということも含めて、活きてる波の中に自分が在る実感が強烈に感じられるアルバムになりそうです。



Q:ZEN RYDAZはどのようなクルーだと感じますか? 各々のメンバーの印象を教えていただけますでしょうか?
A:
ZEN RYDAZ:これも前出のインタヴューで話したことですが 、アラビア語では、一つが単数、2つは双数、3つ以上で複数になる。活用形が増えて学ぶ者にとってはえらく面倒なのですが、反面、世界の捉え方として確かにそうだと思うところもあり。個と普遍性の境目であり、点が線となって面を成す創造の数である「3」のパワーとバランスがZEN RYDAZなのかなと感じてます。


Q:大場キャンプ場にて開催された「MOVEMENTS - ONENESS  GATHERING」でのライヴはいかがでしたか?
A:入院中のベッドから、心だけステージの上に飛ばしてました(笑)。



Q:「THAT  IS  GOOD」にてZEN  RYDAZのライヴを撮影をされましたが、ミステリーツアーに参加されてみていかがでしたか? 
A:いつも音の上だけで遭っていた皆さんとリアルで逢えて最高でした。ただ、現在視力が異常に落ちていて周りがまったくく見えておらず、ぼんやりしてたり挙動不審だったり、気がつかないところであれこれ失礼をしてたらホントごめんなさい。


Q:今後、ZEN RYDAZでやってみたいと思うことがありましたら教えて下さい。
A:音楽として自然な流れの中で新境地を切り開くような音が生まれる瞬間に、これからもたくさん立ち会う予感がしてて、楽しみです。


Q:個人的にシャウトしたいことがありましたら、教えて下さい。
A:「音楽は魂の糧」



Photo:Yoshiaki Hirokawa@Kejonuma Leisure Land
Text:Kana Yoshioka





KYOKO OIKAWA(及川景子)

アラブ・オリエンタルヴァイオリニスト。
音楽の源流、魂の音楽をもとめ、たどり着いた中近東の音楽手法に傾倒。
岡洋子氏にクラシック・ヴァイオリンを師事。チュニジアのベシール・セルミ 氏、エジプトのアブド・ダーゲル氏およびサード・ムハンマド・ハサン氏に、アラ ブ・ヴァイオリン奏法とアラブ古典音楽理論を師事。
全国各地でアラブ・中近東音楽の演奏、オリエンタルダンスと音楽のコラボレー ション等で活躍する他、CD解説、各種レクチャー、DJやヒューマンビートボクスと の共演などで、オリエンタル音楽とヴァイオリンの表現の可能性を発信。
近年は毎年、エジプト、チュニジア、モロッコ、フランス等に足を運び、研鑽と 演奏の旅を重ねている。

https://manipadme.jimdo.com

BACK